転換期のインターネット

理事長 椿 康和          
(広島大学大学院社会科学研究科・教授)


 私たちCSIは1993年3月に任意団体として発足し、1999年9月の法人化を経て今日まで、 当地域における良好なインターネット接続環境の維持とネットワークコミュニティの 健全な発展への貢献をミッションとして活動してきました。この間、通信事業者による 高水準のネットワークサービスが提供されるようになり、一般社会への普及・啓発活動や 技術者等の支援についても相応の成果を上げることができました。このため、本年5月26日に 開催された第10回総会におきまして、本協議会のNPO法人としての活動を、2009年3月 (平成20年度末)をもって終了することを提案し、ご承認いただきました。これまでの CSIの活動に賜りました皆様のご支援ご協力に対し、厚く御礼申し上げます。
 インターネットという言葉がほとんど認知されておらず、パソコン通信との違いから 説き起こさざるを得なかったCSIの設立時と、インターネットがあらゆる社会経済活動の 基盤となり、ポストインターネットとしての新世代ネットワークの議論が進み始めた 現在とを比べると、まさに隔世の感があります。
 巨大なサイバー空間に成長したインターネットは、今、大きな転換期を迎えようと しています。生活や社会のあらゆるところで、さまざまなモノと人、モノとモノを 自由につなぎ、意識することなく情報のやりとりができるユビキタスネットワーク社会を 実現するために、アドレス資源の枯渇が目前に迫ったIPv4から、IPv6へ限られた時間の 中で円滑に移行することが求められています。

CSI役員・運営委員他
(2007年9月1日、CSI合宿、サンシャイン・サザンセトにて)
 それと同時に、ここ数年の間に急激に悪化してきたインターネットの混雑への対応も 急務です。インターネット上のトラフィックは年率40%(2年間で2倍)のハイペースで 増加しており、その大きな要因として動画配信やファイル交換が挙げられています。 あるISPの調査によれば、全ユーザの1%にすぎないP2Pユーザによって帯域全体の60%が 占有されていました。一部のヘビーユーザの度を越した振る舞いがすべての利用者に 悪影響を及ぼしているのが現実です。インターネットの混雑状況は、混雑の要因と なった魅力的なコンテンツの提供事業者と絶え間ない通信能力の増強を求められている 通信事業者との対立を生じさせています。わが国における、低廉な定額料金によって 魅力的なコンテンツやサービスを堪能できる世界最先端のブロードバンド環境は、 今後のユビキタス化の進展によって、通信需要に対して供給能力が追いつかなくなり、 混雑を回避するための帯域の制御や、通信料金の大幅な値上げが行われる可能性も 考えられます。


CSI役員・運営委員(2007年12月1日現在)

理事長 椿 康和
副理事長 相原 玲二、染岡 慎一
理  事 西村 浩二、前田 香織、前田 真理、吉田 典可
監  事 大場 充、片山 博昭
運営委員 相原 玲二(委員長)、前田 香織(副委員長)、今井 一雅、 上野 優香、田島 浩一、
玉井 基宏、西村 浩二、野村 怜子、匹田 篤、前田 真理、松川 正義


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