インターネットは、すべてのユーザにとって適正な対価によって自由かつ公平に
利用できるものでなければなりません。現在のように、ユーザ間で利用状況に極端な差が
あるにもかかわらず、同一の料金で利用内容も制限されていない状況は何らかの改善が
必要です。また、インターネットに係るコストの負担が適切に行われるよう、コンテンツ
提供事業者、通信事業者、ISP、そして利用者という、立場を異にする多くのステーク
ホルダーの間で利害を調整するとともに、状況に適した新たな枠組みを作っていくことが
求められています。とはいえ、巨大化し商業化したインターネットの現状を考えると、
それは容易なことではないでしょう。 他方、各国の通信事業者は、既存の電話網や各種のネットワークから、インターネットと 同じIP技術を用いた新たなネットワーク(NGN:次世代ネットワーク)へ移行し、 通信事業者による一元的な管理の下で、通信品質(速度)が保証された安全で信頼性の 高いサービスを提供しようとしています。わが国のNGNは、NTTを中心に光ファイバー網を 基盤にしたQoS(Quality of Service)のあるブロードバンド環境の提供に特徴があり、 2008年3月から一部の地域でサービスが開始され、2010年には全国の2,500万世帯が 利用可能になる予定です。 NGNはインターネットと相互接続されます。光ファイバーやADSLなどの現在の アクセス線は順次NGNに移行しますが、その接続先について、品質保証のある管理された ネットワークであるNGNの範囲内に留まるか、品質は劣っても自由なネットワークである インターネットに出るか、の選択はユーザの手に委ねられています。コンテンツとユーザが ともにNGNに直接繋がっていれば、一定の対価により高品質の快適なサービスを受けることが できるため、それを魅力と感じるユーザはNGNへシフトするでしょう。しかし、現段階では NGNのサービス範囲は国内に限られており、海外のコンテンツやサービスとの接続は インターネットに頼らざるを得ません。このため、NGNがインターネットの混雑解消に どの程度の効果があるかは未知数ですが、NGNの登場はインターネットの運営にも 少なくない影響を及ぼすものと思われます。 これからNGNとインターネットが並存する中で、新世代ネットワークの議論が 進められて行きます。CSIの設立から今日までのネットワーク環境の変化を考えれば、 10年後の2010年代後半に登場すると思われる新世代ネットワークによって、現在の様々な 課題が解決されるものと期待しています。 |