インターネットと犯罪

広島県警察本部・生活安全部・生活安全企画課
ハイテク犯罪対策室 警部補 土肥章裕


 二十数年前、父が我が家にコンピュータを持って帰ることになり、母親がタンスより大きいシロモノがやってくると勘違いしたことがあります。今では当たり前のように小さなコンピュータで電子メールを送るなど、私が改めて言うまでもなく、インターネットに代表される近年の情報通信ネットワークの発展は目覚ましく、最新の技術や便利なサービスが急速に普及しています。

 しかし、この情報通信技術の発展は、一方で犯罪に利用される影の側面を持ち合わせており、特に、名前や顔を知られない匿名性、実際の距離に関係なく多くの人を対象とできる広域性、といった特質が悪用され、オークション等を使った詐欺事件や、電子メールを使った脅迫事件、出逢い系サイトを巡る犯罪など、インターネット利用者であれば、誰もが被害者となり得る犯罪が急増しつつあります。

 この“誰もが被害者となり得る状況”は、ハイテク犯罪に限ったものではなく、自転車の盗難、ひったくり、住宅での窃盗事件など、実際の社会における犯罪の傾向と変わりません。つまり、犯罪を行おうとする者から見れば、特定の者を狙うのではなく、狙いやすい者に対して、犯罪のやりやすい場所において犯罪を敢行する傾向が強いのです。

 例えば、実社会とネット社会における犯罪を具体的に比べてみると、「狙いやすい者」とは、実社会では外出時に鍵をかけない人であり、ネット社会では安易なパスワードをつける人と言えるでしょうし、また、「犯罪のやりやすい場所」とは、実社会では目撃者や防犯カメラのない場所であり、ネット社会では、ログも残さず身分確認の不十分なサーバ(サイト)、と言えるのではないでしょうか。  実社会において家の鍵をピッキングに強い錠前に換えたり、防犯カメラを取り付けるように、インターネットの社会においても、利用者や管理者の姿勢により、相手(犯罪企図者)に対してスキを見せない、犯罪をさせる機会を与えないことが、犯罪やトラブルに巻き込まれないために最も重要なことなのです。


ハイテク犯罪の検挙状況(平成14年)
出典:「警察白書」(警察庁発行)

 インターネットの世界においても犯罪が増加する中、ハイテク犯罪捜査を担当する者として、これからのネット社会が、多くの利用者や技術者の情熱や理想に支えられ、一人でも多くの人にとって、安全に安心して利用できるものとなることを願ってやみません。そのためにも、CSIの果たすべき役割と活動はますます重要になっていくものと思います。 メンバー皆様方の益々のご活躍を期待致します。

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