CSI ネットワークマスター 虎の穴 市民公開講座
〜通信・放送の連携 と デジタルコンテンツ創造〜

講師

「メディアの融合が切り拓く創造社会」
金 正勲氏 (慶應義塾大学 デジタルメディア・コンテンツ統合研究機構(DMC) 助教授)
資料はこちらから

 

 

「デジタルコンテンツ創造における取組み -子ども教育の観点で-」
石戸奈々子氏 (特定非営利活動法人CANVAS 副理事長)
資料(1)はこちらから
資料(2)はこちらから

開催を終えて 〜レポート&開催風景〜

9月16日(土)、広島・広島市まちづくり市民交流プラザにて、「通信・放送の連携と デジタルコンテンツ創造」をテーマに市民向けに講演(第1部、第2部)・ディスカッション (第3部)を行う「CSI ネットワークマスター 虎の穴 市民公開講座」を開催いたしました。

CSI会員様、学校関係者、およびネットワークに興味を持つ一般の方々等
約50名の皆様方にご参加いただきました。

冒頭に、中国・四国インターネット協議会(CSI)理事長であり広島大学理事 ・副学長の椿 康和先生より開会挨拶およびイベント趣旨説明がありました。。

第1部では、慶應義塾大学 DMC機構 助教授 金 正勲氏より通信・放送の連携の経済的側面に ついてご講演いただきました。タイトル:メディアの融合が切り拓く創造社会

はじめに金氏は、技術・政策・文化・経済が密接に繋がりあう社会経済システムについて触れられ、いずれに取組むにしても他のカテゴリとの関係性を無視してはいけないとご説明されました。 これからの社会経済システムについては、情報通信技術の目覚しい発展とメディア融合の進展により、コンテンツ産業の経済的可能性が拡大傾向に向かうと述べられました。

また、「知識を活用するだけではなく、新しい知識を生み出す社会へと移行していくであろう」と 述べられ、知識経済から創造経済への移行をご説明されました。例えば、メディアと消費者の関係で見ると、今まではマスメディアはコンテンツの制作・流通を行い、消費者は配信されるコンテンツを消費するという関係性であったが、今後(既にそうなりつつあるが)は簡単にコンテンツの発信者になれると仰います。その際に、「創造的な成果を如何に社会的・経済的価値に転換するかがとても重要であり、必要なことである」とご指摘されました。

メディア融合に関連する「社会経済システム」「コンテンツ」「通信」「メディア」「放送」等のカテゴリの歴史的背景、特徴などについてもそれぞれ解説いただきました。

コンテンツ

コンテンツ産業は経済的に高い付加価値が期待されている。

通信

16兆円市場(その内、NTTが12兆円弱)。ブロードバンドで10倍の伝送容量になっても、経済的価値は10倍にはならない。

メディア

コンテンツを運ぶことにより、経済的価値を生産

放送

4兆円弱市場と通信よりも小さな市場。
電波の希少性と公共性という二つの意味で規制政策(免許制度)が取られ、数十年間新規参入がない。
インターネットなどの伝送路の多様化により通信との融合が検討され始めた。

今後は、メディア融合を進めていくにあたり「サービス」「伝送路」「端末」「事業者」「規制政策」の5つのカテゴリの融合が起こっていくとし、そこでは以下の政策的2大問題があるとご指摘されました。

・同じネットワーク上での異なるサービスへの異なる規制の適用問題
・異なるネットワークにおける同じサービスへの異なる規制の適用問題

第2部では、特定非営利活動法人CANVAS 副理事長 石戸 奈々子氏よりデジタルコンテンツ創造における子供教育の現場についてご講演いただきました。
タイトル:デジタルコンテンツ創造における取組み -子ども教育の観点で-

はじめに石戸氏は、CANVASの設立趣旨をご説明されました。こども向け創造・表現活動を全国的に 展開しているCANVASは、ワークショップという手法を用いて、全国各地でこども達の創造活動を 支援されいます。今後のデジタル社会を支えるこども達がアニメや音楽など様々なコンテンツを 創造する支援が必要であり、「情報の要となるようなセンター」の必要性を感じCANVASを 設立されたとのことでした。

石戸氏は「CANVASの活動はデジタル化とはきっても切り離せない。」と述べられました。 PCは創造活動を今までよりもずっと容易にしてくれたし、ブロードバンド化は創造活動に おけるコミュニケーションの手助けをしてくれている。誰しもが簡単にコンテンツを作成する ことができ、流通することができる。「コンテンツを消費するだけではなく、生産にも参加する ことができることを感じて欲しい」(石戸氏)

次に、様々なこども向けワークショップの中で幾つかの具体事例をご紹介いただきました。 「おとコトひろば」という事例は、こども達による作詞作曲コンテスト。Webサイトを通じて、 こども達から歌詞を募集し、寄せられた作品を公表します。さらにそれぞれの歌詞に付けられる メロディーを募集し、Webを通じて見知らぬ人同士のコラボレーションでひとつの楽曲を 作成するというものです。取組の最後にはお披露目のライブが行われ、優秀な作品が演奏されます。 この事例では、音楽制作への敷居を下げ、音楽を自ら作るものへと変えて行きたいという願いが 込められているとのことでした。

こどもどこでもものがたり」というワークショップは、携帯電話を使った国際交流プログラム。 携帯で写真を撮り4コマの写真を用意。日本とフランスそれぞれで同じ4コマの写真にものがたりを つけるという取組です。ここで非常に興味深いのは、フランスのこども達は4コマの写真に ロマンチックなストーリーをつけますが、日本のこども達は最後に"オチ"をつけようとすると いうところです。文化の違いがこのような場面で表現され、こども達は、創造活動を通じて国際的な 文化交流も体験することが出来きます。

CANVASではデジタル化の恩恵を最大限に活かしながら、一方では、ワークショップの材料に粘土や 水を使ったり、リアルな空間でワークショップを開催するなど、こども達がデジタルに偏らないように、「アナログとデジタル」「バーチャルとリアル」のバランスを常に念頭に置きプログラムを検討 されているとのことでした。

参加者の皆様方は、第1部第2部とも熱心にご講演を聞いておられました。 

第3部オープンディスカッションでは、参加者も交えて活発な意見交換が行われました。 メディア融合については、「放送のデジタル化」のメリットがあまり感じられない点に ついて質疑が交わされました。 デジタルコンテンツ創造の子供教育については、地域におけるコーディネータなどの人的 資源不足について問題点が指摘され、また、CANVASと同様の取組は難しくテレビ会議や デジタル放送などを使ってワークショップを遠隔で行って欲しいなどの要望も挙がりました。

今回は、「通信・放送の連携」「デジタルコンテンツの創造」という旬なテーマを市民公開講座で 取り上げましたが、オープンディスカッションの議論から、興味の深さがうかがわれました。

本市民公開講座が、中国・四国地域におけるネットワーク社会の繁栄に多少なりとも 貢献できたことに大変嬉しく思っております。 今後もCSIは、中国・四国地域における情報通信基盤の発展に貢献することを目指して 普及・啓蒙活動を行って参ります。 次回「CSI ネットワークマスター 虎の穴 第7回 〜Webアプリのセキュリティ編〜」は 12月中旬に開催予定です。多くの皆様のご参加をお待ちしております。 よろしくお願い申し上げます。

 

お問い合わせ先

CSI事務局 セミナー担当:池上

セミナー専用Tel:090-7772-5114 (受付時間 平日10:00-18:00)
e-mail:seminar-sec[at]csi.ad.jp

主催:特定非営利活動法人 中国・四国インターネット協議会(CSI)